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また夢から出たネタ。


メモ的なんでそのうち改稿。


白い砂が流れていく。
荒いとは言えないが、きめ細かくもない砂は、風が吹いても舞い上がりはしなかった。
それが何故流れているのかといえば、つまり水が流れるのと同じ事なのだろう。
気味の悪いくらいに青く透き通った空には月がふたつ。
もしかしたらどちらかは勢いを無くした太陽なのかもしれない。

ざぼん

もったりとまとわりつくような音を立てて、砂地から腕が生えてきた。
其れを腕と判断したのは、先端が指のように分かれていたからであって、実際に腕なのかは確かでない。
土気色と紫の中間のような、枯れ枝のようで生木のような、奇妙な質感の腕だった。

触るのも気味が悪いので放っておいて、少し辺りを歩くことにした。
砂の流れを辿る。地上に出ているのは自分と先ほどの腕だけのようだった。
ふと思いついて砂を掬い上げてみる。
白いというよりは透明に近い粒子が指の間からはらはらとこぼれた。なんとなく冷たい気がする。
嗚呼これは水だな、漠然と思った。

あまりに何もないので足跡を辿り、もう一度腕の場所まで戻った。
流砂の上の足跡はともすれば消えてしまいそうで苦労したが、よく考えてみればあの気持ち悪い物体のところまで懸命に戻ってきた自分が滑稽である。

腕は相変わらず砂から突き出ていた。

あまりの変化のなさになんとなく腹が立ったので、砂を掴んで投げつけてやった。
すると、指らしい部分がうねうねと動く。
何かを掴もうとするようであった。
しばらく観察していると動くのをやめたので、今度は砂を掬い上げて上からざあざあかけてやった。
しかし今度はまったく動かない。

なんだこんちくしょう、おどろかせやがって。

それから砂を掬って腕に注ぐ作業を何度繰り返しただろう。
少しずつ腕にみずみずしさが宿ってきたことに気が付いた。
何かを掴もうと固まった腕は、救いを求めているようにも見えた。
すっかり腕の形になったそれは、やはり腕だったらしい。

空はいつの間にかエメラルドグリーンの海のように輝いていた。
あまりに退屈になって、不気味に思っていた腕にそっと触ってみる。

刹那。

腕は恐るべき勢いで触れた手を掴み、そのまま砂の中へと瞬時に潜ってしまった。
手を掴まれているのだから当然一緒に砂に引き込まれた。
思わず目を閉じ、砂の感触に耐える。
どのくらいそうしていたか、ふと気づくと体を包む感触はまるで空気のようで、そして水のようで。
おそるおそる目を開けると、まわりはさきほどの空の色。
下の方にはふたつの光。
浮いているのか、漂っているのか、とんでもなく曖昧な位置に居ることに気づいた。

くすくすと笑う声がして振り返ると、逆光で顔は見えないが、一人の女性が居る。
聞き覚えのある声にハッとして手を伸ばそうとするが体が思うように動かない。
空中なのか水中なのか、とにかく動きづらい環境を恨めしく思った。
その一方、女性はすいすいと遠ざかる。待ってくれ、と言いたいのに声まで出ない。

まっているよ
まっているよ
まっているから

その影が見えなくなる瞬間に声が聞こえ、次第に強くなる光に視界が奪われる。
そうして気が付いたとき、あの砂の丘にいた。
自分一人で、たった一人で立っていた。
頭上にはふたつの月。吐き気のするほど青い空。
右も左もない世界で、一歩の重さを痛感する。


まっているよ。
なんて曖昧な、それでいてひどく甘美な。
砂のように軽い口約束だとしても、それを心の支えにしていればこんな世界でも耐えられるのだろうか。




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